local culture 〜飯山篇

地域の魅力を発見。
地元の方に故郷の魅力溢れる人、場所、コト
を教えていただく『ローカルカルチャー』。
第1回は『山物語を紡ぐ人びと vol.19』田中淳さんがおすすめする長野県飯山。

 

1.信越自然郷アクティビティセンター / 浅野慧さん

20160131_0172s飯山はフィールドと町が近い

北陸新幹線の開業とともに、飯山駅構内に新設された『信越自然郷アクティビティセンター』は、トレイルランナーやハイカーなどアウトドア好きには嬉しい施設だ。

飯山駅から半径20km圏内にある9市町村が連携する『信越自然郷』。アクティビティセンターは、このエリアで楽しめるアウトドアの情報発信、ツアーの手配や講習会の実施などを手がけている。

館内では自転車やトレッキング、スノーシューなどのレンタルも行っており、手ぶらで新幹線に飛び乗ってアウトドアスポーツを楽しむことができる。セレクトされたギアや地域限定グッズを眺めるのも楽しい。フィールドに出かける前に、ちょっとした便利アイテムを買い足すことも可能だ。新幹線駅の構内にある施設としては、とてもユニークな試みといえるだろう。

この施設に勤める浅野慧さんは、2015年春の開設と同時に東京から飯山へと移り住んだ。奥さまが飯山出身で、かねてから夫婦でスキーやトレイルランニングを楽しむために、この地に足繁く通っていたという。

20160131_0029「以前はアウトドアブランドを扱う会社に勤務していました。そこでトレイルランニングのブランドを担当していたこともあり、斑尾で開催される大会に出場したりして、飯山には知り合いがたくさんいたんです。いつか移住していたみたいなと思っていたところ、この仕事と出会い、引っ越すことに決めました」。

かつての静かな駅舎から、新幹線駅へと変化を遂げた飯山駅を毎日、見ている浅野さん。これからますますアウトドアを目的にした観光客が増えることを期待している。

「移住して実感したのは、車で30分から1時間ほどの距離に魅力あるフィールドがたくさん広がっていることです。アメリカでいえば、ランナーやクライマーが集まるボルダーみたいな場所。フィールドが近くにあり、そこでアクティビティを楽しむ人たちが町中に住んでいる。新しいライフスタイルが実現できるエリアが、ここ飯山じゃないかと思うんです」。

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・信越自然郷アクティビティセンター

営業時間:9:00~18:00(4月~10月)、9:00~17:00(11月~3月)
定休日:無休
TEL:0269-62-7001
https://www.shinetsu-activity.jp

 

 

2.神仏の鷲森  /  鷲森秀樹さん

20160131_0598清澄な空気が育んだ仏壇づくり

飯山街道沿いにある神仏の鷲森は、創業およそ150余年の歴史を持つ神仏具店。伝統の技を受け継ぎながら、新しい高度な技術と材料も取り入れ、仏壇仏具の製造や御神輿などの祭具の製造修理、社殿の修復などを手がけている。

六代目の鷲森秀樹さんは地元の仲間とともに、町の活性化に向けたさまざまな活動にも取り組んでいる。『山物語を紡ぐ人びと vol.19』の中に登場した『若ショック!』もそのひとつだ。

飯山には仏具店が多い。飯山市、木島平村、栄村、野沢温泉村の4つ市町村だけで198箇所もの神社仏閣が存在する。この地で誕生した『飯山仏壇』の起源は、元禄2年(1689年)に甲府から寺瀬重高という人物が訪れ、素地仏壇をつくったことにあるといわれている。塗り仏壇となったのはそれからずっと後、越後潟町から来た鞘師屋佐七という人物によるものとされている。

なぜこの地で仏壇づくりが盛んになったのだろうか。「仏教の信仰が篤かったこと、城下町で寺社が多かったこと、仏壇の原材料が手にりやすかったこと、漆塗りに最適な清澄な空気と適度な湿度があったことなどが理由といわれています。豪雪地帯という環境も影響しているかもしれません」。

20160131_0649鷲森では三代目の頃から社内一貫作業で『飯山仏壇』をつくり続けている。

「昔は千曲川が流通経路だったそうです。船で途中までつくられた仏壇が運ばれてきて、飯山で金具を打って、また千曲川で上越など近隣の村まで運んだといわれています」。

飯山仏壇の製造は5つの工程に分かれおり、社内に木地師、塗師、箔押し師、彫り師、組立師が在籍している。熟練の職人たちの技術を応用し、先代の頃からは祭礼用具にも力を入れ始めた。いまでは全国から修復の依頼が相次ぐ。

「いま日本全国で職人不足が深刻な問題になっています。若い人たちに少しでも伝統文化を知ってもらいたい、身近に感じてもらいたいと思っているんです」。

さらに6年ほど前からは伝統技術を活かし、アウトドア製品もつくるようになった。「伝統工芸と現代ニーズの融合」をコンセプトに加え、屋外で使える椅子やテーブル、『升カップ』などを製造している。

トレイルランとの関わりも大きい。20160131_0549

北信濃で大会をプロデュースするネイチャーシーンに協賛し、トロフィーや賞品などを提供しているほか、飯山市で開催する複数のトレイルランレースをサポートしている。

アウトドアの世界に神仏具店が協力するケースはとても珍しく映る。「これほど優れた技術を持つ職人たちがいるのに、世の中に知ってもらう機会が少ないと以前から感じていたんです。そんな折に、協賛のお話をいただきました。最初はうちのような業態がアウトドアの世界で表立って活動していいものかと迷っていたのですが、ネイチャーシーンを率いる大塚さんのトレイルランへの情熱や地元に根づいた活動に共感して、お引き受けすることにしました」。

20160131_0601s最近では店に立ち寄ったり、工場見学に訪れたりするトレイルランナーも増えているという。「職人たちも、みなさんとお話できることをすごく喜んでいます。アウトドアの世界を通して、人の輪が広がっていることを実感しています」。そう、鷲森さんは笑顔で語った。

鷲森さんが考える飯山の魅力とはどんなものだろう。「一見、とっつきにくそうみ見えるけれど、中に入ってみるとフレンドリーなところでしょうか。家業を継ぐ前は東京や長野で働いていましが、その頃に比べると飯山は時間の感覚はとてもゆったりして見えます。もっとスピード感があればいいのにと思うこともありますが、そこもよさかなと最近では感じています」。

田中淳さんがアウトドアで地域を盛り上げようと力を尽くす一方で、鷲森さんは飯山仏壇の文化を守り、伝統の技術を次世代へ繋げていくことに情熱を傾けている。

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●神仏の鷲森 / 飯山本店

長野県飯山市愛宕町
TEL:0269-62-2753
http://www.washimori.co.jp

 

 

 

3.パティスリー・ヒラノ 

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地元のフルーツをふんだんに使ったケーキ

飯山駅から車ですぐの場所ある『パティスリー・ヒラノ』は地元で人気のケーキショップ。明治期からこの地で和菓子店を営み、1984年にケーキ専門店として生まれ変わった。オーナーの平野信一さんは四代目に当たるという。

以前からその人気は耳にしていたが、今回の取材で初めて店を訪ねた。ショーケースには色とりどりの美しいケーキが並び、選ぶのに迷ってしまう。訪れた2月はちょうど苺の最盛期で『苺パイ』や『苺のクラフティ』が人気を集めていた。

上の写真は、長野産のリンゴを使用した『焼きリンゴのタルト』。季節により桃や洋なしなど、旬のフルーツを用いるという。

「飯山の人たちはあまり濃い味を好まないんです。ムースよりもスポンジやカスタードクリーム、生クリームが好きな方が多い。そんな中、どうやって店の特色を出していこうかと考えた末に、果物の名産地である長野らしく、地元のフルーツを積極的に使うようにしました」。

20160131_0318たとえば、この辺りで栽培されているルバーブを使ったケーキは、春と秋に店頭にお目見えする。「6月と10月に収穫期があり、季節によって味わいもや色合いが少し違うんです」。

店の奥にはカフェも併設されていて、好きなケーキを選び、コーヒーや紅茶などのドリンクとともに楽しむことができる。このカフェスタイルは、お客さまからのリクエストをきっかけに生まれたという。パフェやワッフルなどのオリジナルメニューも豊富で、何度でも通いたくなる。

平野さんに「ひとつだけ」とお願いして、おすすめのケーキを伺ってみた。「ヒラノロールです。スポンジの美味しさを追求したいという想いがあり、丹精込めて焼いています」。きめ細かく、もちっとした食感で優しい味わい。素材も卵、砂糖、小麦粉、蜂蜜、サラダ油のみ。シンプルなだけに、焼き加減がとても難しいという。

20160131_0351店全体が醸し出す雰囲気からだろうか。カフェでケーキをいただく時間は、なんとも安らかで幸せなひとときだった。

パティスリー・ヒラノらしさとは、どんなところにあるのだろう。

「手づくりの温かさを出したいと思っています。素材の味を活かせるように、あまりお酒などは使わず、素朴な味、優しい味を心がけています。子どもに買ってあげたくなるようなケーキですね。一度食べたら『また食べたいね』と言ってもらえるようなものがつくれたらなと思うんです」。

20160131_0359そう話す平野さんの柔らかな笑顔から、ヒラノのケーキがなぜ地元で愛されるのか、その理由がわかったような気がした。

●パティスリー・ヒラノ

長野県飯山市中央通り2228
TEL:0269-62-2361
http://p-hirano.com/cafe-space/

 

 

4.御菓子処 大黒屋

20160131_0207「バナナボート」発祥の和菓子店

田中淳さんがお気に入りの和菓子は、大黒屋の『福最中』。

薄皮の中に餡がぎっしりと詰まっていて、隠し味の塩加減が絶妙だ。食べ応えもあるので、トレイルランニングやトレッキングの行動食としてもぴったりだという。

飯山では昭和の頃から、冬になると和菓子店の店先に『バナナボート』という洋菓子が並んだ。由来は諸説あるが、片手で食べられる気軽さと栄養価の高さから、スキーブームの頃に人気が高まったといわれている。

20160131_0237ここ大黒屋は、飯山にまだ洋菓子店がなかった50年ほど前、冬だけの限定商品として、スポンジをカステラ型で焼きスライスして、生クリームとバナナを挟んだバナナボートを始めて売り出した店だ。

発売時期は10月頃から初春まで。飯山の地を訪れるスキーヤーやスノーボーダーの中には、毎年販売開始を心待ちにしているファンも多い。バナナボートは現在、市内にある菓子店11店舗が手がけており、店ごとに特色があるため食べ比べても楽しいだろう。

20160131_0227シンプルな味わいで王道感の漂う大黒屋のバナナボートを、まずは最初に試してみたい。

●御菓子処 大黒屋

長野県飯山市大字飯山1149
TEL:0269-62-2402
営業:7時〜18時
定休日:毎週火曜日(年末年始)
http://www.iiyama-ouendan.net/special/banana/

 

 

5.焼きカレーの店 ペンティクトン

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フィールド帰りに立ち寄りたくなるカレーショップ

戸狩スキー場近くにある「焼きカレーの店 ペンティクトン」。田中さんはトレイルランを始めた頃から通っているという。

一番人気はなんといっても20種類のスパイスを調合した「焼きカレー」。また、裏の畑で栽培している野菜をたっぷり使った「スープカレー」もぜひ味わいたい一皿。

この日は残念ながら、町の会合で不在だったためオーナーの木原孝さんにお会いすることは叶わなかったが、次回はぜひ。山と海のようなボリュームの裏メニュー「焼きカレーのメガ盛り」をペロリ。

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●焼きカレーの店 ペンティクトン

長野県飯山市大字豊田6543-1
TEL:0269-65-4611
http://www.penti.jp

 

photo by Shimpei Koseki