11月12日『松本大 SKY RUNNING TALK SHOW!』@神田さかいやスポーツ

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11月12日(水)、神田さかいやスポーツ・シューズ館において『松本大 SKY RUNNING TALK SHOW!』が開催されました。

2013年に『JAPAN SKYRUNNING ASSOCIATION』を立ち上げた松本さんは、競技生活と並行して、国内におけるスカイランニングの普及にも尽力しています。

今回のトークショーでは、世界のスカイランニングの現状と、普段なかなか伺うことのできないアスリートの日常をたっぷりとお話くださいました。

 

スカイランニングとトレイルランニングの違いとは?

知っているようで意外にわかっていない、トレイルランニングとスカイランニングの違い。

松本さんによれば、スカイランニングは「垂直方向を目指すマインド」を持ち、トレイルランニングは「どちらかといえば水平方向を目指すマインド」を持つスポーツといいます。

トレイルランニングという言葉はアメリカで生まれ、この10年で広く知られるようになりました。”トレイル” は未舗装路の道を意味しますので、トレイルランニングには登山道以外の林道や海岸沿いの道も含まれています。アメリカは比較的なだらかな地形が多いことから、丘陵や平原のオフロードを走るスタイルが原点となっているようです。

一方、ヨーロッパには山岳地帯が多く、古くからマウンテンランニングやアルペンランニングといった言葉が根づいていました。ここには、林道は含まれていません。現在、ヨーロッパで盛んなスカイランニングは、約20年ほど前から発展しました。競技性が高いことも特徴のひとつです。

もともとは標高が高い峻険な山を駆け上がったり下りたりすることを意味していたスカイランニングですが、最近では標高が高くなくても急峻であればスカイランニングのカテゴリーに入ってくるそう。例えば、超高層ビルを駆け上がるバーティカルランニングも、広義ではスカイランニングに入ります。

こうしてみると、スカイランニングはトレイルランニグの中のひとつと見ることができますが、逆にスカイランニングの中にはトレイルランニングとは呼べない分野も含まれることがわかります。

大きくわけると…
●トレイルランナー =距離を意識
●スカイランナー =垂直方向の上り下り、標高を意識

 

松本流「スカイランナー度チェック」

ここで「スカイランナー度チェック」が行われました。YESの数で、自分のスカイランナー度がわかります。

1.山を見るとテンションが上がる。
2.超高層ビルを見るとテンションが上がる。
3.頂上に立ちたいという衝動に駆られる時がある。
4.空気が薄くなるとテンションが上がる。
5.アスレチックで遊ぶのが大好きだ。
6.登った山なら、だいたいの標高を覚えている。
7.新田次郎の小説を読んだことがある。
8.雪を見ると滑りたくなる。
9.天気予報を結構チェックしている。
10.山道を走った経験がある。

(YESの数)
・8〜10 = スカイランナー(垂直方向の上り下りが好き)
・5〜7 = マウンテンランナー(平坦と垂直を合わせたアップダウンのある山道が好き)
・0〜4 = トレイルランナー(どちらかというと平坦なトレイルが好き)

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みなさんは、いかがでしたでしょうか?

 

日常で心がけているのは疲労抜き

登山とマラソンを愛好するお父様の影響で、子どもの頃から自然に山を走っていたという松本さん。学生時代は、登山部とスキー部に所属していました。練習ではロードも走ったそうですが、「景色も変わらないし、平地を走るのはあまり好きでなかった」と振り返ります。

大学を卒業して4年間の教員生活の後に、プロのスカイランナーに。
日常では「練習の半分は疲労抜き」と考え、体のケアを入念に行っているそうです。特に気をつけているのは良質な睡眠、アイシング、マッサージなど。

食事については、内蔵を疲れさせないよう暴飲暴食を控えているほかは、あまりストイックになりすぎずに好きなものを食べているのだとか。オフシーズンには大好きなビールを飲み、生クリームのお菓子も食べるそうです。

 

週に4〜5回、山に入る生活

山へ練習に行くのは、基本的に気が向いた時。週に4〜5回ほどで、本格的な練習が2回、あとはジョグ程度です。「山で本格的に走ると、一日では抜けきれない疲労が残ります。それほど、山のアップダウンは体への負担が大きいんですよね」。

気が向かないと山に行かないというスタンスは、意外に大事なことかも知れないと松本さんは話します。「行きたくないということは体が欲していないということ。つまり疲労がたまっているという可能性が高いわけです。そこで無理をすると、怪我のリスクにも繋がります」。

7年前にねんざをして以来、怪我とは無縁。その理由は、ケアを怠らないことと同時に、走り方にもあるのではないかと考えています。

下りでは、かかとをつけると足をひねりやすくなるので、かかとはつけずに着地します。「コサックダンスのようなポンッポンッというリズムです。足首を伸ばして、バレリーナのようにつま先で着地していきます。下りの上手な人は前から見ると、足裏が見えません」。

そして「上半身はリラックスして、命を吹き込まれる前のピノキオをイメージ。前後に規則正しく腕振りをするのではなく、大きな段差を超えるような時には手をあげて安定させます」と伝授。

もっと詳しく知りたい方は、ぜひ松本さんの講習会にご参加を。

 

スカイランニングのDNAを次世代に伝えていきたい

スカイランニングの国際ルールでは5kmごと、あるいは標高500mごとのエイドが定められています。そのため、レースに出場する選手はジェルとジャケットは携帯しますが、水分は持ちません。

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いま、日本のトレイルランニングレースでは山岳耐久系やウルトラトレイル系が多く、選手の持ち物が多くなる傾向があります。「ヨーロッパではトレイルランニングレースよりもスカイレースの方が盛んで、選手の層が非常に厚い。世界の基準をみなさんにも是非知ってもらいたいのです。日本でも同じようなレースが増えればいいなと思っています」。

松本さんの夢は、スカイランニングの魅力を次世代に伝えていくこと。「自分たちの世代で終わりでなく、世代を超えて地域全体で盛り上がるヨーロッパのようなスタイルで、スポーツのDNAをみなで継承していく流れを日本でもつくりたい」と語ります。

今年、『フィリピン国際スカイレース』『富士登山競走』『国際キナバル山クライマソン』で優勝し、スカイランニングアジアシリーズで二連覇を遂げた松本さん。春には初めてジャパンチームを結成し、スカイランニング世界選手権にも出場しました。大健闘を見せ、結果は47ヵ国中、総合16位。「2年後の世界選手権では、総合トップ10に入りたい」との想いを抱いています。

そのためには、国内におけるスカイランニングへの理解度向上が不可欠です。2015年1月にはスカイランニングジャパンシリーズも発表になるとのこと。スカイランニングの魅力を伝える伝道師として、これからの松本さんの活動にますます期待が高まります。

 

JAPAN SKYRUNNING ASSOCIATION 公式サイト
http://skyrunning.jp