第1回『スカイランニングユース世界選手権』で銀メダル
高村貴子選手の大会レポート
7月29日〜31日、イタリアのアベニン山脈にて第1回スカイランニング・ユース世界選手権『グランサッソ・スカイレース』(U23)が開催されました。日本からは、5月に開催されたユース日本選手権(上田バーティカルレース)の結果により決定した日本代表6名に、参加希望者5名が加わり、計11名が出場しました。
本大会では、スカイレース(SKY/±2226m/21.6km)で上田瑠偉選手が優勝、高村貴子選手が2位を獲得しています。また、それより前に行われたバーティカルキロメーター(VK/+1000m/3.6km)とスカイレースを合わせたコンバインドでも、上田選手が優勝、高村選手が2位となりました。さらに国別順位でも2位という素晴らしい結果を残しています。
コンバインドで見事に銀メダルを獲得した高村貴子選手からレースレポートが届きました。初のスカイランニング海外レースで快挙を成し遂げた高村選手の驚きと感動に満ちたレースレポートをぜひご高覧ください。
〜 自分にとって最初で最後のユース世界選手権 〜
第1回スカイランニング・ユース世界選手権『グランサッソ・スカイレース』が開催されました。私にとって、今回のユース世界選手権(VK・SKYレース)は最初で最後の大会になるので、念願のメダルを獲得できてとても嬉しいです。
VKの大会当日、スタートは午後でしたので、それまでの時間を海外の選手と和気あいあいと過ごし、交流を深めることができました。しかし、スタート1時間前になると、スタートあたりは緊張した雰囲気が高まり、人を寄せ付けないオーラが至る所に見られました。さすがに私もこの日だけは周りの選手が気になって、自分らしくないと思いながら15秒間隔のスタートを待ちます。
カテゴリーの中で私は1番スタート。多少の飛ばしすぎと高地に慣れていなかったことが重なり、いつもより息があがってしまいました。そして抜かれることで焦ってしまい、途中から何をしても体が動かなくなり、ゴールする頃には疲労困憊。VKでは全く自分の力を出し切ることができませんでした。
次のSKYレースは、競技開始が8時15分。前日から日本食(ごはん、味噌汁)を取り入れ、いつもの日本のレースと同じ感覚で迎え、今回はうまくいきそうな感触でスタート。「もし登りではVKのように体が動かなくなっても、下りで頑張ればいい。」と気持ちを切り替えて走ることができました。
SKYレースは一斉スタートで、前日と同じVKコースに入るので渋滞が起こりなかなか前へ進めませんでしたが、逆に突っ込み過ぎを抑えてくれたのかもしれません。前々日のVKタイムより6分も早く通過することができ、それが自分にとって自信に繋がりました。
第一エイドで、長谷川香奈子さんが声をかけてくださり、きつさが和らぎました。しばらく走ると視界が開けて、とても気持ちよく走ることができました。その後は最高地点(2,533m)へ向かって崖がはだかり、ロッククライミングです。岩の段差もかなり大きく、体が小さい私は一歩一歩進むのが大変でお尻がつっているのに、海外勢は長い脚を活かしてたやすく登っていく、ここで何人もの選手に抜かれました。
登りきると、サポートの松本大さんと藤巻翔さんがいらして元気をもらいました。ここからはほぼ下りになり、精神的にも楽になりました。走る区間だったため、足をほぼ使い切ってはいたものの、前の選手に追いつこうとスピード上げた途端に岩に足を取られ転倒。かなりの流血をしましたが、とりあえず香奈子さんのいるところまで頑張ろうと自分を励まして進みました。
香奈子さんのところまで来た時にはすでに疲れがピークに達していましたが「後ろ選手と10分以上離れているよ」と聞き、はじめてのメダルへ期待を込めて、「あと少し頑張ればいいことある!」と自分に言い聞かせ、下りました。
コースの下りは急斜度で岩がごろごろしているし、滑りやすく本当に怖かったのです。ゴールが見えた時、MCの人を含め「大会を盛り上げ迎えてくれる人たちの中をゴールできるなんて、なんて幸せなんだろう!」と感激でした。
ゴール後「2位おめでとう!!」の声で、メダルを獲れたことを実感し、本当にうれしかったです。途中、登山に来ている人たちが「DAIDAI!!」(がんばれ!)と声をかけてくれ、地元の方々も「ジャポネ、アレアレ!」(日本人 頑張れ!)と国籍に関係なく応援をしてくれて元気をもらいました。
今回、海外遠征に参加し、イタリアのレースの醍醐味を味わい、海外の仲間とも楽しく走れて、スカイランニングをより身近に感じることができました。とてもよい経験をさせていただき感謝しています。
2016年8月10日
高村貴子
Photo by Sho Fujimaki