いつかは日本の“ドロミテ”に! 第1回『ZAO SKYRUNNING』

ーーーーー 寄稿 / 長谷川 香奈子 ーーーーー

若きアスリートも開花
地域密着型の素晴らしい大会 

dsc_9536zao-skyrunningPhoto by Nagi Murofushi / WILLE Marketing Co., Ltd. 

 

まずは、山との相性を確かめに

2016年、スカイランニング日本選手権が蔵王で開催することが決定し、今年の目標レースの1つとして設定したのが4月初めだった。レースだけではなく、登山をするときに私が1番大切にするもの、それは「山との相性」。蔵王との相性を知りたくて、8月中旬、現地を訪れた。前半はゲレンデがメインのコースだが全体的に明るく、標高を上げると活火山の息吹を感じる馬の背、御釜が望める。そして山頂を経由して下るというシンプルながらも「THE SKY」が凝縮された見事なコースに、一瞬で心を奪われた。大会へ向けて、まずは気持ちが前向きになった瞬間だ。

 

イタリアと日本のスタイルが融合

大会前日、蔵王温泉に到着すると、出迎えてくれたのは湯けむりと硫黄の香り。蔵王温泉は最高だ。会場につくと、まず目に飛び込んできたのが温泉街の中心に据えられたスタートゲートと、華々しく敷かれた赤絨毯。「ついにきた!イタリアンスタイル」。思わず笑みがこぼれた。昨年参加したイタリアの「ドロミテスカイレース」を思い出したからだ。ここをスタートし、そしてゴールできた時の気持ちよさと感動はひとしお。スタートやセレモニーでは気持ちを鼓舞する和風の曲が会場を盛り上げていた。MCの盛り上げも、ノリノリなイタリアの陽気な雰囲気。日本とイタリアの良いところを取り合って、オリジナルなスタイルにしたのが、「ZAO SKYRUNNNIG」だ。前日の競技説明も、動画を使ってのプレゼンテーション。斬新ながらわかりやすく、今後、世界を見据えた日本のスカイランニングとして、外国人からも人気を得る可能性が高いと感じた。

 

応援が背中を押してくれた日本選手権

レースは前半から全く身体が動かず、「とにかく山のてっぺんまで、そして無事にゴールへ」、それだけを思って完走することができた。±1450m、22キロのコース設定で、「スピード・登坂力・テクニック」の総合力が試される日本選手権。今の自分では実力不足であることを痛感した。長年の疲労の蓄積も出てきていることを感じた。

蔵王は、充実したロープウェイを経由し、山の上で応援できる観戦型のスカイランニング。たくさんのエールに背中を押してもった。地蔵岳ロープウェイの山頂駅ではまさかのMC。山の上でMCが応援してくれているとは思わなかったので、すごくパワーをもらった。天候は良好で、気温・湿度が高い中での開催、脱水や熱中症の危険もあったので、エイドすべてで水分補給と水をかぶることを怠らなかった。

7つのエイドがあり充実していたので、自分ではジェルとジャケットのみを持参すれば十分であり、日本選手権として素晴らしい運営だと思うとともに、スタッフ・関係者のみなさまの尽力に心からの感謝の気持ちでいっぱいだった。地元の方々の協力も随所に感じる、地域密着型の素晴らしい大会であることも体感した。

 

若いアスリートのために何ができるか

2016日本選手権では、何よりうれしいことがあった。若きアスリートたちの活躍だ。日本選手権という大舞台で戦い、見事に結果を残したユースアスリートの面々を目の当たりにし、スカイランニングのシーンで若い力が着実に育ってきていることを実感した。

日本スカイランニング協会では今年よりユースチームを結成し、7月にはユース世界選手権に挑んだ。横のつながりや仲間を大切にし、競技力向上だけでなく安全登山、マナー・ルールへの心がけなどを伝えている。そうした地道な活動が、少しずつ彼ら・彼女たちの笑顔や活躍につながっていくと信じている。

「2年後の世界選手権、香奈子さんと一緒に行きたいです」、あるユースアスリートの一言だ。34歳、まだまだ頑張らねばと背中を押された瞬間。これも若きアスリートと共にいられる幸せなのだ!

2016年9月
長谷川 香奈子

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Photo by Nagi Murofushi