上野朋子さんが挑んだ『Grand to Grand Ultra』

〜 English follows Japanese 〜

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PHOTO COURTESY OF GRAND TO GRAND ULTRA

2018年9月、トレイルランナーの上野朋子さんがアメリカ アリゾナ州/ユタ州を舞台にした『Grand to Grand Ultra』に出場した。総距離273km、7日間6ステージに及ぶ自身初のステージレースだ。各ステージ平均45km前後、第3ステージが85kmともっとも長く、第6ステージが13kmともっとも短い。選手たちは7日間分の食料や着替え、寝袋、そのほか必要なものを持って走る。水(キャンプ地ではお湯)と夜間に体を休めるためのテントは運営サイドが用意してくれる。

上野さんは約10kgのザックを背負い、53時間15分16秒、女子10位でフィニッシュした。トレイルランレースに留まらず、国内外のトレイルで自分らしい山遊びのスタイルを追求し続けている上野さんはなぜいま、この大会に出場しようと思ったのか。出場のきっかけやレース模様を綴っていただいた。

【寄稿】『Grand to Grand Ultra』273kmの旅 上野朋子


ゴール地点は
Grand Stairecase Bryce Canyon 

7日目、そこにはPinkcliffと呼ばれる絶景が広がっていた。ここは標高2600mを超えるコース最高地点でもある。53時間15分16秒、273kmを走ってきてのゴール。この場所に辿り着くまで、自分がどんなフィニッシュを迎えるのかはまったく想像がつかなかった。7日間かつセルフサポートのレースで、いったい体はどんな状態になるのか……。そんな心配をよそに、自分でもびっくりするくらいあっさりとゴールゲートをくぐった。それ以上にゴール地点に辿りついたときに見た絶景、自然の色、高度感に圧倒され、鳥肌が立つような感覚を覚えていた。

「こんな景色を見たかった。贅沢な時間だったな」というのが正直な感想だ。もちろん、7日間走りきった充実感や達成感は、これまでに経験したことのないものだった。でもなんというか、この7日間は言葉に表せない、トレイルランニングの面白さに心が躍り続けた時間でもあったのだ。

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ステージレースへの興味以上に
このフィールドを走りたかった

3年くらい前からこのレースの存在は知っていた。ここ数年アメリカのレースに参戦する中で、友人からも『Grand to Grand Ultra』について話を聞いていたからだ。Grand Canyon周辺の独特の地形や自然を写真で見る度に、「一度このエリアを訪れてみたい」という漠然とした気持ちを抱いていた。

2014年〜2017年の夏にはアメリカ西海岸やカナダのトレイルを走った。レースそのものも楽しいが、その地域にどんな山々があるのか、どんなトレイルが広がっているのだろうかと調べるのが好きだ。レース後に国立公園を回ったり、地元の仲間とキャンプをしたり、いくつもの山を駆け巡ったりする時間そのものに楽しさを感じていた。そして昨年、再びこのレースのことを思い出した。

大学の講師という仕事柄、スケジュールの見通しが立つのが新年度が始まってからということもあり、正式にエントリーをしたのは2018年5月末くらいのタイミングだった。7日間走り続けるということ、そして273㎞という距離。これまでやったことのないチャレンジにもちろん不安はあったけれど、どんなやり方があるのか、どんな準備ができるのかを考える時間は充実していた。

今回のステージレースに対して不安がなかったわけではない。むしろ、エントリーをした当初から試行錯誤の連続だった。ステージレースに興味を持ったというよりかは、このフィールドを走りたかったというのが、率直な気持ちだ。それが自分のスタイルでもあった。自分にとってステージレースを選んだことは自然な流れでもあり、「このフィールドを走りたい」と思った場所が、たまたまステージレースの舞台だったと言ったほうが適切かもしれない。

だから、走りたいレースに向かうわくわくした気持ちが止まらなかった。レースでの目標は、いかに7日間を楽しめるか。そのための準備に集中した。これまで多くのフィールドを走ってきたし、遊んでもきた。短い距離もあれば、長い距離もある。自分にとっての最長は2014年信越五岳トレイルランレースの110kmだったから、273kmはとてつもなく長い距離であり、かつステージレースは全く未知の世界でもあった。

事前の情報収集は
あえて公式情報だけに

ステージレースそのものの仕組みや、その中にも様々なスタイルがあることを知ったのは、実はごくごく最近のことだ。自分のベースはあくまでトレイルランナーなので、このレースに関しての情報も、あえて公式情報からしか得ずに組み立てていった。チャレンジは初めてのことばかり。ただ、それが一番良いと思ったからだ。これだけSNSなどから情報が収集できる時代なので、ステージレースとしての準備はきっともっとできたのかもしれないけれど。

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そして、いつもお世話になっている信頼できる方々に相談し、補給や装備のアドバイをいただいた。気心の知れた友人たちが本当にいろいろと助けてくれ、応援してくれたことが力になった。もちろん、シングルステージと異なるということは十分に想定していた。自然の中で活動するということは、「何かが起きる可能性がある」ということで、トレイルランニングをする上でも、それは常に頭に置いていることだ。

ただ今回は7日間と長い。日中は35度を越えて夜間には0度にまで下がる気温差にどのように対応するのか、3日目の85kmを走るときには体がどういう状態になっているのかなど、当然ながらあらゆる面を想定しておく必要がある。そして、その対処法も考えておかなければならない。

ユタ州南部のKANAB へ

日本を出発し、アメリカのラスベガスを経由して、まずはユタ州南部のKANABという町へ入った。アリゾナ州、ネバタ州都も隣接する地域である。町からトレイルへもアクセスでき、パン屋さんやカフェなど小さなお店が集まったコンパクトな町並みだ。 

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この日はレースのチェックイン、必携装備のチェック、メディカルチェック、ビブナンバーの受けとりなどを町の広場で行った。選手がやらなければならないことは多いが、ボランティアスタッフを中心にとても運営はスムーズだ。

町から見える山は壮大で、「ウォーミングアップに山に行こうよ」という仲間からの魅力的なお誘いも、もう1日とガマン……。早く走りたくてしかたなかった。

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翌日、バスでKANABを出発し、Grand CanyonのNorth Rimへと移動した。ここが最初のビバーク地となる。Grand Canyonは東西に約450kmにわたる渓谷で、North Rimはコロラド川を隔てた北側に位置する。

目の前に広がるGrand Canyonのスケールには、ただただ圧倒された。何十もの層が見える。コロラド川が現在も削っている最も古い層で18億年前の地層だそうだ。North Rimの断崖絶壁に立ったとき、ものすごいところに来たんだなと感じつつ、これからのスタートが楽しみだった。 

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 PHOTO COURTESY OF GRAND TO GRAND ULTRA

時代の変遷を足許に感じながら

9月23日、朝8時にNorth Rimをスタートした。このレースは、毎朝8時にスタート(第3ステージのロングステージと、最終日はウェーブスタートとなる)し、その日のフィニッシュ地点でキャンプをする。初日は約50㎞のコースで、Grand Canyonを終日見ながら走った。 

6つあるステージのトレイルは、シングルトラックや岩場を登る個所、ガレ場など非常に変化に富んでいる。と同時に、それぞれのフィールドの自然の色に驚かされた。赤色や白色、グレー色の崖、薄茶色、そしてピンクがかった色。それらの変化はすべて地層の色の違いなのだ。それらの色の変化とともに時代が変遷しているということがとても興味深かった。地球の歴史を足元で感じながら走れたのは、すごく新鮮な経験だった。

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PHOTO COURTESY OF GRAND TO GRAND ULTRA
 

さらに興味深かったのは、砂地のトレイルだ。日本ではあまり見られない環境で、砂の足元がどんどん沈み埋もれていく(海岸線の砂浜のさらに砂が軽いような感じ)。背負っている荷物が重いので、足元はますます沈み不安定さが増した。

このエリアの中でもとくに有名な美しい砂漠地帯Coral Pink Sand Dunesも通ったが、景色は美しいものの体はしんどい。レース中で一番きつい時間帯だったかもしれない。このときは、アメリカ、スイス、オーストラリアの選手とパックで進んでいた。自分一人では進めなかったのではといま思う。

 寒暖差による体のダメージ

予想以上に大変だったのは昼夜の気温差だ。昼間は35度を超えるような暑さもあり、想定はしていたけれど、やはりダメージは大きかった。 

特に第3ステージ。この日はロングステージで85kmあるが、スタート時刻はこれまでと同様の朝8時。朝から暑く、9時過ぎには予想以上に日差しがジリジリと照りつけていた。いやな予感は的中した。紫外線が強すぎ、下半身(短パンをはいていたので、膝裏からふくらはぎにかけてが)水ぶくれになって脚が動かなくなった。体全体も熱中症のような感覚になってきた。日陰で荷物を下ろして、休むこと3回(笑)。レース中にこんなに休んだことは初めてだったが、前に進み続けるための判断だった。

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PHOTO COURTESY OF GRAND TO GRAND ULTRA

7日間走っていて、忘れられない風景がいくつかある。そのひとつが、第4ステージのトレイルだ。前日にロングステージを走っていたこともあり、それなりに体のダメージがあった。コースは、Zion National Parkの見えるキャンプ地をスタートする42km。スタートから比較的体調もよく、ペースは抑えながらも良いスピードで走れていた。

ステージ終盤、標高2000m前後でDiana’s ThroneというWhite cliffの岩壁を眺めながらの美しいシングルトラック。視界も開けていたので周りの景色に圧倒されながらも、自然と体が動き続けていた。本来のコースは、下り続けて上り返しとなるのだが、あまりにも気持ちよく叫びたくなるほどのトレイルだったため、コースをそのまま外れてしまった。たまたま前を(といってもしばらく前方)走る選手に丘の上から呼ばれてしまう。それくらいに気持ち良いトレイルだった。

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PHOTO COURTESY OF GRAND TO GRAND ULTRA


国や文化が違っても気持ちは通じる

レースの中で、きつい時間帯というのはあるもの。それでも、前に進み続けられたのは、一緒に走る選手と話したり、ボランティアスタッフが声をかけてくれたりと、人の力があったから。

第5ステージ。この日の終盤は暑かった。しかも、コースには日影がなく、なかなかのタフさを強いられていた。いつものように同じような顔ぶれで進む(日に日に、なんとなく前後の選手は顔見知りになる)が、お互いに前に出たり、出られたりの繰り返し。周りの選手もだいぶ疲労がたまっているようで、表情とジェスチャーといったコミュニケーションからも、それがよくわかった。そんなときこそ、お互いに大変だったセクションのことや、自分の国の文化の話をして盛り上がることもあった。

各ステージに3〜4カ所あるチェックポイントには、とにかく陽気で、気さくに声をかけてくれるスタッフがいる。国も地域も文化も異なるのに、「自然の中を走る」という行為を通じて何か気持ちが通じるものがあるように感じた。

止まるのがもったいない

とにかく走っていて楽しい、ただただ楽しい。そんな毎日だった。こんなところを走れるのかという新鮮さと、トレイルのコンディションが変化していく面白さに毎日わくわくしながら走っていた。

最終日、キャンプ地から見えるBryce Canyon を目指す。これまで260kmを超える距離を走っていたことを忘れるくらいよく体が動いた。途中、7日間をともにしたいつもの仲間と走る場面もあった。いつものように、お互いに前後を行ったり来たりした。

山頂へと続くトレイルを走っていると、突然視界が開けて、今までとはまた違った山が現れた。高度感と岩場、壮大な岩壁、「わーっ」っと声が出そうになるのと同時に、気持ちの良いシングルトラックの上を足はどんどん加速していった。50kmレースの終盤でも、100kmレースの終盤でもあまり出したことのないようなスピード感で走っていた。足を止めて景色を眺めていたい気持ちもあるけれど、止まるのがもったいない。写真を撮るのも、撮るために足を止めるのももったいない。前に進むことだけを考えている、そんな不思議な感覚だった。初めての感覚だった。 

「あれはなんだったのだろか?」と、ゴールしてからも考えた。その不思議な感覚の答えは、はっきりとはまだわからない……。体と心がマッチしたような感じとでもいえばいいのだろうか。

 「走って、生活をする」という贅沢な時間

このレースを振り返り、それをあらめて言葉にしてみると、「純粋におもしろくて」「走って、生活をする」「シンプルで贅沢な時間」だったと言える。はたから見たらきつそうなことでも、自分にとっては楽しくて好きなことだから苦痛ではなかった。

魅力的なフィールドがあって、そこで出会う人たちがいる。自分にとってのトレイルランニングは、走ることを超えて、心を突き動かしてくれるものとの出会いなのだと改めて感じた。

自然の色がとにかく綺麗だった。夕焼けが空を染める時間はほんのわずかだ。分単位で空の色が変化するのを眺めていた。空の色、空気の冷たさ、温かさ、それを感じるセンサーはデジタルでは測りきれないものだと思う。日の出、日没、月の明るさ、そうしたシンプルなものの美しさに気づき、感動する。ここには、加工された写真の色ではない自然の色が広がっていた。

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 PHOTO COURTESY OF GRAND TO GRAND ULTRA

自然と体との対話から得たもの

このレースでは原則、電子通信機器の使用が禁止されている。当然、外部との通信手段は得られないし、GPSも使用できない。ではその中で、距離や天気、フィールドの情報をどう得るのか。それは自然とのやりとり、自分の体とのやり取りの中にある。 

日常生活では仕事があり、日々の生活を営む上でのやるべきことがたくさんある。デジタルの機器に囲まれて、いつでも必要な情報を得ることができ、それをSNS で発信することもいまや多くの人にとって身近な行為になっている。自分自身も日々そのような生活を送っているが、今回の7日間では「走る、食べる、会話をする、寝る」という実にシンプルな時間を過ごした。 

私たちは日頃、シャワーを毎日浴びる。日本人は1回のシャワーで60リットル近い水を使用しているそうだ。キャンプ地では水はとても貴重だった。飲料水、手や足を洗う分も含めて、1人4.5リットル程度。共同のタンクでお互いに気遣いあって使用する。そして、ごみをいかに減らして生活するかということを考える。そんな時間を過ごしながら、人と人が思いやって生活すること、生活の根源について考える機会にもなった。

ステージレースに固執するつもりはまったくない。7日間通して走り切ることから学んだ、必要な装備、必要な食糧、自分自身のコンディショニングや走り方、毎日変化する自然条件への対応、普段のトレイルランニングをベースにした事前準備などによって、より長く自然の中で遊べる経験値がほんの少し上がったかなと感じている。きっとこの先、違ったフィールドで遊ぶときにも生かせることが多いと思うし、レースに限らず、さまざまなスタイルで遊ぶためのきっかけのひとつになったのではないかと。

新しい世界との出合いは冒険心を掻き立てられるものだった。そして、自分が本当に好きなものは何かを問い直す時間にもなった。「自然の中を走ること」は自分にとってライフスタイルの中にあるものだ。今までも、そしてこれからも。この先も、最高に楽しい時間を突き詰めていきたいと思う。

多くの方に応援していただき、協力をしていただいた今回のチャレンジ。皆さんのお力なしでは達成できなかったと思います。この場を借りて改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。

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Profile
上野 朋子 Tomoko Ueno

1983年神奈川県横須賀市生まれ。子どもの頃から家族と登山やスキーなどアウトドアを楽しむ。中学高校、順天堂大学時代はテニス部に所属し、大学院ではスポーツ心理学を専攻。修了後、大東文化大学の教員に。2009年からトレイルランを始め、国内外のレースに参戦。斑尾フォレスト50km優勝、信越五岳トレイルラン2位、志賀高原エクストリームトレイル2位、Cougar Mountain Trail race(米国)優勝など。冬はスキー、グリーンシーズンはトレイルランや縦走登山など四季を通じて山に親しみ、新しいフィールドとの出会いを楽しんでいる。

Special Thanks:Grand to Grand Ultra

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“Gran to Grand Ultra” challenged by Tomoko Ueno

In September 2018, trail runner Tomoko Ueno Participated in “Grand to Grand Ultra” in Arizona / Utah, USA.

It was her first stage race, with a total distance of 273 km, and 6 stages for 7 days.

Each stage averages around 45km ; the 3rd stage is the longest at 85km and the 6th stage is the shortest at 13km. The competitors run  for 7days carrying food, clothes, sleeping bags and anything else they need. The management side prepares water (hot water in the campsite) and a tent to rest at night.

Ms. Ueno , carrying about 10 kg of supplies, finished in 10th place  at 53 hours, 15 minutes, 16 seconds.

Ms. Ueno , enjoys her own style of outdoor life on trails at home and abroad , and not just trail running race. So why did she want participate in this ultra running race? We asked her to tell us about the race and how she got involved.

Contribution

“Grand to Grand Ultra” 273km journey    Tomoko Ueno

The goal point is Grand Stairecase , Bryce Canyon

On the 7th day, there was a spectacular view called Pinkcliff.

This is also the highest point of the course over 2600m above sea level. 53 hours 15 minutes 16 seconds, the goal of running 273 km. Until I reached this place, I had no idea what kind of finish I would get.

What is the state of my body be in a 7day, self-supporting race?

Despite such worries, I went through the goal gate quickly enough to surprise myself.

I was overwhelmed by the superb view I saw when I reached the finish point. The color of nature, the sense of altitude, it gave me goosebumps. This was the view I had longed to see. What a luxury.

Of course, the sense of fulfillment and accomplishment I had ran for 7days was something I had never experienced before. But for the last 7days, it was also a time when the excitement of trail running continued to be intriguing.

More than interest in stage races I wanted to run in this location

About three years ago I first heard of this race. In the last few years my friends who raced in the US. Often talked about Grand to Grand Ultra. Every time I saw pictures of the unique topography and nature around Grand Canyon, I had a vague feeling that I would like to visit this area. In the summers of 2015-2017, I ran on the trails of the American West Coast and Canada. The races were fun, and I like to find out what mountains and trails there are in the area.

After the races I enjoyed traveling around the national parks, camping with my locals and running around the mountains. And last year, I remembered Grand to Grand Ultra.

Because of my job and the race schedule, it was about the end of May 2018 that I officially entered. Running for 7 days and a distance of 273 km. Of course I was uneasy about these challenges I had never faced before, but I had plenty of time to think about it. I wanted to enter this race because of the location.

So I was excited about the race I wanted to run. My goal for this race was how to enjoy 7 days. I concentrated on preparing for that. I have been running and enjoying many locations so far. Some are short and some are long. 273 km was a tremendously long distance, and the stage race was also a totally unknown world to me.

Gathering information from official sites

Actually,it was only recently that I learned how the stage race itself works and that there are various styles in it. Since my basic style was just trail running, And this was my first stage race, I had to gather information on this race only from the official information., But it wasn’t difficult. That was a very simple way.

I also consulted with the friends, and got advice about supplies and equipment. They were really helpful in so many ways. Of course, that it would be completely different from a single stage race. Working in nature means “anything can happen”, and you always need to keep that in mind for trail running. But this was 7days race. How to cope with the temperature differences over 35 degrees in the daytime to 0 degrees at night ; and what kind of state the body is in when running 85 km on the 3rd stage day. You have to be prepared.

To Kanab in southern Utah

I left Japan and went through Las Vegas in the United States to the city of Kanab in southern Utah, close to the borders with Arizona and Nevada.

It is a compact town with easy access from the town to the trails with small shops such as bakeries and cafes. On the day of the race check-in, mandatory gear check, medical check-up, reception of bib numbers, etc. took place in the town square. The mountains seen from the town are magnificent, I couldn’t wait to run.

The next day, I left Kanab by bus and moved to Grand Canyon’s North Rim. This is the first bivouac place. Grand Canyon is a valley that extends approximately 450 km east-west, and the North Rim is located north of the Colorado River. I was just overwhelmed by the Grand Canyon’s scale in front of me. Dozens of layers are visible. It is the oldest formation the Colorado River is still carving out, and it is a stratum of 1.8 billion years ago. When I stood on the cliff edge of the North Rim, I felt that I came to a great place and I was looking forward to starting from here.

Experiencing Running through natural history

On September 23, I started from the North Rim at 8 am. The race starts at 8:00 every morning (the 3rd stage; the long stage, and the last day is the wave start), and camps at the end of the day. On the first day which was about 50km, I ran while watching the Grand Canyon all day. The 6 stages of trails are very varied, such as single tracks, rock climbing sites, and rocky trails. At the same time, I was surprised at the natural color of each area; Red, white, gray cliffs, light brown, and pinkish. All these changes were caused by the differences in the color of the formation. It was very interesting to me that the change of these colors were a result of running through different levels of sedimentation.

It was a very fresh experience to run while feeling the history of the earth at my feet.

One of the most interesting places to me was the sandy trail. In an environment not seen in Japan, my feet would sink in the sand more and more. This sand was different that the sand on a beach, because it was so light. Because of luggage carried on my back my feet have became increasingly instability   and sunk. It also passes through the beautiful and famous desert area Coral Pink Sand Dunes. The scenery is beautiful but my body felt terrible. It may have been the toughest time in the race. At this time, I was running with American, Swiss and Australian competitors in a large pack. I think now that I could not have proceed alone.

Body damage due to temperature difference

What was more difficult than expected is the temperature difference between day and night. In the daytime, the temperature was over 35 degrees, which I assumed, but the damage was still big.Especially the 3rd stage. The day is 85km on the long stage, but the start time is 8 am the same as before. It was hot from morning, and after 9 o’clock, the sun was much hotter than I expected. The UV rays were too strong, and the lower body (short pants, so from the back of the knee to the calf) became blisters and the legs stopped moving. The whole body also has a sensation like heat stroke.

I have been running for 7 days and had seen some unforgettable scenery. One area was during the 4th stage trail. I had been on the long stage the day before and there was some serious damage to my body but the beauty helped me forgot about my pain.  The course is 42 km starting from a campsite where you can see Zion National Park. I was in relatively good shape from the start and was running at a nice pace.  The beautiful single track of Diana ’s Throne at the end of the stage is at about 2000m elevation and overlooking the rock wall of the White Cliff. Because the view was also open, my body kept moving naturally while my mind was overwhelmed by the scenery. The race course goes down and then back up, but because I was distracted by the beauty I ended up going off course!  I was very fortunate that another competitor happened to notice me and called out to me.  It really was a incredible place to run.

Feelings can be communicated even if countries and cultures are different

During the race there are many difficult times.  But I was able to keep moving forward because there were other competitor who were becoming my friends.  It was also very helpful for me that the staff at each checkpoint (about 3 or 4 check points per stage) we so cheerful and friendly. I needed this help especially in the 5th stage. The second half of the day was very hot. Moreover, the course had no shadow and was tough!  It was nice to run along side of familiar faces even though they were just as tired as I was.  I could see on their faces a reflection of my own exhaustion.  Sometimes we talked about how difficult sections of the race were and other times we chatted about our home countries.  Even though we came from all over the world we were able to connected through this experience of running in nature together.

It Almost feels like a waste to finish

On the last day, from our morning camp we can see our target, Bryce Canyon.  We had run 260km to get to this point, but my body seemed to forget all those kilometers and want to run on its own.  The trail toward the summit opened up and suddenly and scenery changed drastically again.  I could see the huge rock formations of Bryce Canyon and the wonder of their rock faces and magnitude made my pace increase naturally.  Soon I began to notice that I was going fast!  I seemed to be running faster that I normally would run during the middle of a normal 50km trail run.  I wanted to stop and take it all for a moment but, it seemed like a waste to stop now while my feet were moving so naturally and so quickly so all I thought about was to keep moving forward.  These thoughts were puzzling to me and I just pondered them while I ran.  But after the race was completed I remember thinking back on these thoughts and feelings and realized that my mind and body were working together in harmony to help me reach my goal.

To live each day by running is a luxury

As I look back on this race and try to put into words my feelings about it; to live life while running is simple and fun and therefore it felt like a luxury, is what comes to mind.   If others were looking at this lifestyle they would probably get stuck on how difficult and hard running that far is, but for me it did not feel difficult.  To be able to run in a place that appealed to me so much and to meet other runners who wanted to be there too, for me this trail running experience was much more than just running a race, it moved me to my core.

The natural colors were amazing!   Sunsets dyes the sky for just a moment but I was able to take the time to enjoy each of these special moment.    The colors of the sky, the chill in the breeze and the warmth of the sun, these are things that can not be captured in a picture. The sunrises, sunsets, and brightness of the moon were so simple, yet I was able to notice their beauty and it moved me deeply.  The natural colors which seemed quite different from a processed picture were something that I experienced here in the Canyon.

What I learned from the dialog between my body and nature

The use of electronic communication equipment is prohibited during this race. There is no means of communication with the outside world and the use of GPS is prohibited. Then, how can we get information about the weather, distance run and surroundings?  That is obtained by my interaction with nature and listening to my body.

In daily life there is work to be done and many daily tasks that much be accomplished.   We are surrounded by digital equipment that provides us with necessary information 24/7 and we can relay information easily to others..

I am usually one of those people who lives such a life filled with information and tasks to do, but during these 7 days I was able to live a much simpler life; I ran, ate, had conversations and slept.

We usually take a shower every day. It is said that Japanese use close to 60 liters of water during one shower.  The water was very valuable at our campsites.  Including our drinking water, we were alloted 4.5 liters every day to wash our body and hands.  We had one shared tank to use together.   This lifestyle made us think about how we could reduce our waste and footprint.  While living together like this it provided an opportunity to think about how we humans can live in together in simplicity and harmony.

I have no intention to make stage racing part of my regular racing schedule.  But because of this 7 day long running experience I am now more prepared and knowledgeable regarding necessary preparations needed to run for extended periods of time; nutritional needs, responding to nature, interacting with my tiring body and making adjustments, and responding to the changing environment.  I think I have become more aware of all these things through this experience.  I think all of this will be useful in my future adventures.

This extremely new experience for me ignited a new depth of desire for adventure in me.. and it gave me time to ponder what I really enjoy in life.  To run in nature for me is a lifestyle I want to continue pursuing.  In the future I want to continue to make and choose this lifestyle.

Lastly I want to really thank all the many people who have supported me and cooperated with me to make this incredible experience possible.  I could not have done it without you!  Thank you so much.

■ Profile

I was born in Kanagawa in 1983. Since I was a child I was able to enjoy mountaineering, skiing, and being outdoors with my family.  In junior and senior high school as well as in University I was on the tennis team.  In graduate school I specialized in sport psychology.   I am currently a teacher at Daito Bunka University.   I enter my first trail run in 2009 and have recently won the Madarao forest Trails 50k race and took 2nd place in the Shinetsu-Gogaku trail running 110km race, and 2nd place in the  Shiga-kogen extreme trail 56km race.  I also started racing overseas and won the Cougar Mountain Trail 42km race in Seattle WA in 2015.   I continue to love exploring new places by trailing running during the green season and skiing in the winter.