第1回『スカイランニングユース世界選手権』で金メダル
上田瑠偉選手の大会レポート
イタリアのアベニン山脈で開催された第1回スカイランニング・ユース世界選手権『グランサッソ・スカイレース』(U23)にて、スカイレース(SKY/±2226m/21.6km)とコンバインドのカテゴリーで優勝を果たした上田瑠偉選手から大会レポートが届きました。上田選手の冷静な視点に、未来の日本スカイランニング界を牽引する若きエースの秘められた力が垣間見えます。
〜 熱い魂に宿る冷静な心 〜
7月29日~31日に開催された、第1回ユース世界選手権である、Gran Sasso Skyraceに出場しました。私は前週に開催されたスカイランニング世界選手権(Buff Epic Trail)にも出場していたので、ほかのユース日本代表選手団とは28日に合流しました。時差調整はばっちりでした。
28日に現地入りをし、バーティカルのコースをロープウェイで下見をしましたが、平坦な個所もあり、世界選手権のコースよりはきつくないだろうと感じました。
レース当日を迎え、私は最後から3番目のスタート(ウェーブスタート)。快調にとばし、どんどん前の選手を抜いていきますが、給水所(1.60㎞地点)手前で私より30秒後にスタートしたイタリア代表の選手に抜かれました。そこから私のメンタルは崩れ、走り続けることが鍵であるのに(持論)歩き始めてしまいました。気持ちを切り替えて追い込もうとするも内臓が気持ち悪く、レースの中盤は「繋ぎ」状態。ゴールが見えてラストスパート。結果は総合4位でした。
優勝したのは早々に私を抜いて行った、イタリアのHANNES選手。前週の世界選手権でも3位でした。2位はスペインのORIOL選手。世界選手権は15位。3位はスペインのJAN選手。彼はまだ19歳で世界選手権でも8位。ちなみに私は世界選手権のバーティカルでは10位でした。3位のJAN選手とは1分差あり、上位選手には完敗でした。HANNES選手とは2分半差もあり、世界トップレベルとの差を痛感しました。しかし、ORIOL選手には前週は私が勝っていて、JAN選手とも前週は30秒差。それにも関わらず勝てなかったのはメンタルの弱さ、調整力不足であると思います。あそこで粘れていたら、もっと食事に気を付けていればと終わってから後悔しました。
なか一日をはさみ、スカイレース当日。前日と当日の朝は日本から持ち込んだ食事をメインにしました。
8:15にスタート。バーティカル優勝のHANNES選手は欠場でした。最初はバーティカルと全く同じコースを走ります。始めは、バーティカル5位で昨年のスカイレース2位のチェコ代表・TOMAS選手にくっついていきました。バーティカルコースと重なる中間ほどでJAN選手が先頭に。
ただ、標高が700mほど上がったところでJAN選手がコースを逸れ(直登してよいところを迂回してしまい)、呼び戻しましたが、そこで私が先頭に。そこからは一度も先頭を譲ることなくトップでゴール。レースを振り返るときつかったところは全くなく、終始冷静に景色を楽しみながら走ることができました。
レースを終えて、日本の選手と他国のユース選手とを比べてみると、彼らは登坂力はあるけれど走りこむような練習はしていないのだなと感じました。私はすでに長い距離も走っているので20㎞ほどでは長いとは感じません。しかし彼らが長い距離にも慣れだしていったら、恐ろしい選手になりそうだと感じました。
大会期間中はほかのユースチームと同じホテルでしたので、コミュニケーションをとり、多くの友人もできました。またどこかのレースで再会し、一緒に走ることが楽しみです。
今回、ヨーロッパでスカイランニングを2大会経験して、もっと本場のコース、サーフェイスに慣れる必要があると感じました。日本でもヨーロッパの環境に近い山はないか、探していくのも楽しみです。スカイレース、コンバインドで初代ユースチャンピオンになったわけですが、最高の成績を出せたのもこのような機会をいただいたおかげです。この機会を作っていただいたすべての方に感謝いたします。
2016年8月8月15日
上田瑠偉
Photo by Sho Fujimaki