上田瑠偉オリジナルブランド「Ruy」が小笠原光研を第一号サポートアスリートに


世界を舞台に活躍するトレイルランナー上田瑠偉が展開するブランド「Ruy」。ブランド立ち上げ1周年となる4月1日からは新たに、小笠原光研をサポートアスリートとして迎える。いまなぜ選手サポートを決めたのか?小笠原選手の魅力とは? ブランド創設者としてのビジョンや第一号サポートアスリートしての抱負などを、上田瑠偉&小笠原光研の両選手に聞いた。

〜上田瑠偉選手コメント〜

大手ブランドの支援が少ないレンジで活躍する
センスある選手を育てたい

ーーーなぜいま選手サポートを決めたのでしょうか?ブランド立ち上げ当初から選手支援は視野にあったのですか?

上田瑠偉(以下:上田):「Ruy」を立ち上げた理由の一つとして、収益の一部を使ってトレイルランニング業界を盛り上げたいという考えがありました。その一つが、ブランド立ち上げ当初から行っている地元大町の北アルプスにある伊藤新道復活への寄付です。

二つ目のアクションが、このアスリートサポートです。若くてセンスもあり、海外志向の強い選手が増えてきているにもかかわらず、大手メーカーのサポート体制はウルトラディスタンスの選手を支援する傾向がまだまだ強いので、それなら僕がショートやミドル志向の若手選手を育てたいという思いがありました。

ーーー上田さんにとって、センスのある選手とはどのような選手なのでしょうか。

上田:性格面でいえば、競技歴が浅くても結果を出せたり、海外レースでも自分の力を十分に発揮できたりするといった粘り強さやメンタルの強さを持つ選手です。

小笠原選手を選んだ理由は
初海外レースでの活躍ぶり

ーーーサポート選手の第一号として小笠原選手を選んだ理由は?

上田:いちばんはサロモンが開催している国際シリーズ「Golden Trail Series」での2022年最終戦での活躍です。彼は「National Series」を勝ち上がって最終戦に参戦しました。最終戦はポルトガルのマデイラ諸島で開催される5日間のステージレースでした。僕を含めた「World Series」を勝ち上がってきた世界のエリート選手を相手に、初めての海外レースにもかかわらず5日間でオープン5位、総合12位という成績を収めました。各ステージ20~30㎞程度のレースなのですが、ステージ前半は僕と1,2分差で順位も2つ3つしか変わらない走りをしていました。

また彼は50〜100km未満のミドルディスタンスにも適正があると感じています。「IZU TRAIL JOURNEY」では2年連続で入賞し、昨年は2位という成績でした。そのほか、バックボーンが僕と同じサッカーであることや、僕がコロナ禍で始めた「Japan F.K.T. Journey」の北海道での記録を破ったあたりにも可能性を感じています。

ーーー小笠原選手にどんなことを期待していますか?

上田:もちろん結果を出してほしいのですが、北海道在住ということで北海道の山の魅力もぜひ国内外に向けて発信してほしいと思っています。また一緒に海外遠征をしたり合宿をしたりする中で、良い練習パートナーになってくれることも期待しています。

ーーー「Ruy」ブランドを背負うアスリートが2人になり、ブランドイメージはどう変化していくと考えますか?

上田:僕も小笠原選手も海外で戦いたいという気持ちが強いので、チャレンジ精神の宿ったブランドに見えてくるのかなと思います。今後さらに選手が増えるかは売上次第ですが(笑)。サポートするなら個人的には今の時代を生きる選手ではなく、5年後10年後に日本を代表するような選手をサポートしたいので、そうすると自ずと若い選手になると思います。その時には「Ruy」アイテムの購入や、その他のブランド活動への参加を通して、皆さんと一緒に次の世代を育てていくブランドになっていくのかなと思います。

次の時代をつくっていきたい
いつか賞金レースも

ーーーブランドが今後目指しているビジョンを教えてください。

上田:多くのアウトドアブランドがある中でおこがましいのですが、次のトレイルランニングの時代をつくっていきたいです。若い選手が次の時代をつくっていくので、彼らが活躍できる場を整えていきたいと考えています。その一つの方法が選手サポートなわけですが、ゆくゆくは上田瑠偉として、これまでとは違うレースもつくっていきたいと思っています。

ーーーそれはどのようなレースなのでしょう?

上田:一番やりたいと思っているのは、しっかりとした賞金を出すこと。それがアマチュアスポーツからの脱却に一石を投じると思うからです。その賞金を活用することで選手の練習環境が整ったり、海外に挑戦する機会がつくれたりすれば、大会が日本のトップ選手を応援しているという形が生まれます。もちろん、賞金レースに見合うレベルの高いレースにしなくてはならないですし、開催地の魅力をふんだんに盛り込んだコース設定やおもてなしをしたいとも考えています。

あとはレースを観戦できるようにしたいですね。費用面は置いておいて、いまの技術を使えばライブ配信も可能ですし、実際に海外の国際レースはそれがスタンダードになりつつあります。配信などを通して観戦できる体制を整えることで、今まで見ることができなかったレース展開やトップの走りを追うことが可能になります。それが、より一層トレイルランニングの魅力を伝えることになると思っています。選手の家族や友人もレース内容を見ることができるようになり、より多くの人にトレイルランニングの魅力を伝えることが可能となるでしょう。一定の視聴数が見込めることが明確になれば、大会にもより大きな企業スポンサーがつくことも考えられます。

〜小笠原光研選手コメント〜

話を聞いたときは驚いた
何かの間違いかと

ーーー上田選手からサポートを提案されたとき、どう感じましたか

小笠原:最初は本当に驚きました。昨年冬の「IZU TRAIL JOURNEY」の前にお話をいただいたのですが、普通の平日で仕事終わりにスマホを見たら上田さんからのメッセージがあり、最初は間違いかと思いました。内容を読んでみたら全然間違いではなく、読み終えたときは非常に嬉しかったですし、光栄に思いました。


ーーー小笠原さんから見て、上田選手はどのような選手だと思いますか?

小笠原:間違いなく知名度・実力ともに日本のトレイル界のトップかつ世界的に活躍されている選手で、とくに僕ら若い世代が真っ先に目指す存在だと思います。また競技としてはもちろんですが、第一線にいながらも自分のブランドをつくっていることや他の活動を含めてすごいと感じています。

ーーー昨年のマデイラ諸島でのレースは海外初レースと伺いました。世界の舞台はいかがでしたか? また次に向けて、何を強化すべきと感じましたか?

小笠原:海外が初めてということもあり、怖いもの知らずでチャレンジする気持ちで挑みましたが、大会の盛り上がり、選手のレベルが高く、非常に面白いと感じました。トップの選手とは全く勝負もできませんでしたが、また世界で戦いたいと思った瞬間でもありました。次に向けては苦しい時に踏ん張れるようにしていきたいと思います。具体的には、登りの走力の差を一番感じたので、そこを強化していきたいです。

大学までサッカー部
初トレイルランで走りの虜に

ーーートレイルランに出合うまでの経緯を教えてください。

小笠原:小学生から大学生までサッカーをしていました。大学生になり時間の余裕ができていろいろなことにチャレンジしているなか、トレイルランニングをしている大学の同級生がおり、サッカーの練習がオフの日に山にアテンドしてもらいました。そしてその日のうちに、トレイルランの虜になりました。

サッカー部引退後、卒業間近の2月に初めてレースに出場し、卒業後は年に数回大会に出場するようになりました。昨年度からは勤務する会社からサポートしていただくようになり、出場レースも増え、もっと上を目指したいと思うようになりました。

ーーー日頃はどんなお仕事をされているのですか? 

小河原:スタジオGという会社で働いております。就労継続支援というかたちで就職が困難な方に向けて陶芸とPCの基礎を教えています。利用されている方の成長はやりがいを感じるとともに自分の刺激にもなっています。

ーーー働きながら高いレベルで競技に取り組んでいるわけですが、お仕事と競技のバランスについて、どのような工夫していますか? 日常の練習スケジュールやトレーニングでとくに意識していること、年間のレーススケジュール確保など教えてください。

小笠原:自分の場合は勤務する会社の社長や上司にすごく応援してもらっているだけでなく、競技についてサポートしていただいているので、基本年間スケジュールは自分の希望に沿って決めることができています。ただ普段の平日は一般の会社員であるため、片道10km弱の通勤をランニングや自転車で行ったり、就業前後に近くの山や公園でトレーニングしたりして時間を確保しています。その分、土日は強度を高めたり、距離を延ばしたトレーニングをしたりしています。

プレッシャーを楽しみつつ
海外でのトップ10入りを目指す

ーーー「Ruy」ブランドを背負うことについての抱負を聞かせてください。

小笠原:瑠偉さんのブランドかつ自分が初めてのサポート選手ということもあり、プレッシャーも少なからずありますが、それも楽しみつつ最高な結果を求めてチャレンジしていきます。

ーーー今年の目標を聞かせてください。

小笠原:海外レースに多く出場する予定です。世界のトップに少しでも喰らいつき、メジャー大会でもトップ10入りを目指していきます。国内の大会では優勝が少なく、2位などこれまで勝ちきれないことが多かったので、勝ち切れるようなレースをしていきたいと思っています。

ーーー将来の目標を教えてください。

小笠原:競技面では日本のメジャータイトルを獲ること、海外のレースで表彰台に立つことが大きな目標です。またトレイルランニング人口が増えるような活動もしていきたいです。こちらはまだ具体的に決まっていませんが、形にしていきたいと思っています。


■Profile
小笠原光研 / Koken Ogasawara
1996年9月9日、岩手県花巻市生まれ。
Instagram: @koken_ogasawara

■主な戦績
(2022年)
テイネトレイル / 優勝
The 4100D マウンテントレイルin野沢温泉37㎞ / 優勝
小谷トレイルオープン・イン栂池 / 2位
白馬国際クラシック/2位
GTNS Grand Final in Madeira / 5位
伊豆トレイルジャーニー2022 / 2位
(2023年)
ハセツネ30K / 優勝

Photo:Sho Fujimaki
Text:Yumiko Chiba