地域ごとに精査し、それぞれの最良策を導き出す
3月31日、環境省より『国立公園内におけるトレイルランニング大会等の取扱いについて』が発表されました。4月1日(27年度)より、各地方環境事務所に告知されます。
背景には、山岳地の利用の多様化と国立公園等をコースに設けるトレイルランニング大会の増加があります。地域環境に適さない内容で大会が開催されれば、歩道の維持管理の妨げや自然環境への影響、一般利用者の安全で快適な利用環境の確保などへの影響が懸念されることから、今回のガイドラインが取り決められました。
この告知に先立ち、2月には新宿御苑にて2回の概要説明会が開催されています。1回目の説明会の様子と概要については、こちらでご紹介しています。
2月の概要と今回の決定稿では大幅な変化はありませんが、より具体的な追記事項が見受けられました。以下、原文をもとに、ポイントと追記箇所を簡単にまとめてみます。
【原文 / 1〜6の画像はクリックで拡大します】
【ポイント】
※(左の1〜6の画像はいずれもクリックで拡大)
●自然保護法は国立公園内の歩道を走ることを制限するものではないが、多人数で競い合いながら狭い歩道を走行するトレイルランニング大会等は、不適切な内容で開催される場合、さまざまな懸念材料がある。
●公園計画における歩道は、本来は走ることを想定していない。そのため大会等は自然環境、他の公園利用者への配慮、維持管理など慎重な対応が必要。
●本通知はトレイルランイング大会及びイベントを対象とし、個人によるランニングは含まない。
●本通知は、各国立公園管理運営計画区ごとの運用が適当。
●特別保護地区を通過するコースは基本的に避ける。ただし、部分的に通過する際、歩行区間の設定等を行うことで自然環境等への影響が発生しないと考えられる場合は、地域の実情に応じて判断。
●歩道の複線化や拡幅が懸念される場所は、踏み込み防止柵の設置等を行う。
●すでに洗掘を受けている場所をやむを得ず通過する場合は、マットを敷設して養生するなどの措置をとる。
●利用者の多いルートは混雑期は原則として大会等を開催しない。
●大会等の開催について、周辺地域や一般利用者へあらかじめ周知しておく。
●主催者、参加者、応援者が遵守すべきルールを設定(※6枚目、チェックリスト例を参照)
●専門家や自然保護団体等の意見を聞いて、それを反映し、関係各所と十分な事前調整を行う。
●必要に応じて、モニタリングを実施。結果により原状回復の措置を行う。
●夜間走行を含む大会等は、本通知の趣旨が配慮されているかを確認。
(ルール等におけるチェックリストの例)
●適正人数、自然環境への影響がないスタート場所の設定、適正な数のトイレなど。
●他地域から土とともに植物の種子等が持ち込まれないよう、競技開始前に参加者や応援者の靴底を洗浄。
●住宅街や希少生物の生息地を避けた応援場所の設定。
●緊急事態に対応できる体制を整える。
●大会用の案内表示は混乱を招かないようわかりやすく。
●悪天候などの際には、速やかに中止等の判断ができるように体制を整える。
●レース中も一般利用者への配慮を心掛ける。
●登山者と行き交う時には丁寧な声がけを。
●ストックはキャップをつけ、使用が認められた区間のみ。
3月27日には、これまで「上越高原国立公園」に含まれていた妙高戸隠地域が分離され、32番目の国立公園「妙高戸隠連山国立公園」が誕生しました。
今回のガイドラインの告知を受けて、各国立公園の自然環境や利用実態を踏まえながら、今後はさらにそれぞれの地域に合った大会計画が練られていくことを期待します。
環境省『国立公園内におけるトレイルランニング大会等の取扱いについて』(PDFもダウンロードできます)
http://www.env.go.jp/nature/trail_run/index.html
環境省 地方環境事務所(全国7ブロック)
http://www.env.go.jp/region/
環境省ホームページ
http://www.env.go.jp
国立公園ホームページ
http://www.env.go.jp/park/