陸上の名門出身の若きトレイルランナー
4月4日(土)、『MtSN×BADASS!! コラボトークイベント』が開催されました。ゲストは、昨年の日本山岳耐久レースにて、7時間1分という驚異的なスピードで優勝を果たした上田瑠偉さん。聞き手は、トレイルランニングカルチャーを発信する東京のショップ『Run boys! Run girls!』オーナーの桑原慶さんです。
上田瑠偉さんは、1993年生まれ。長野県大町市のご出身で、現在は早稲田大学商学部に通っています。
小学校から中学にかけてはサッカーチームに所属し、同時に陸上にも力を注いでいました。その後、陸上競技の名門である佐久長聖高校へ進み、故障と闘いながら競技生活を送ります。
早稲田大学では同好会への所属を決めました。箱根駅伝の常連である競走部に入らなかった理由について、上田さんは「走ることを楽しみたいという思いが強かったから」と話します。
2013年、10代の思い出にと同好会仲間と参加した100kmのウルトラマラソン『柴又100k』で、5位に入賞。それを見たマウンテンハードウェアのスタッフからトレイルランニングをすすめられ、この世界に飛び込みました。
主な戦績は……
2013年
・三原白竜湖トレイルレース 優勝
・武田の杜トレイルレース 優勝
・日本山岳耐久レース 6位
2014年
・ハセツネ30k 優勝
・日本山岳耐久レース 優勝
2015年
・Sean O’Brien 5位(アメリカ)
トレイルランニングを始めてわずか2年で、実に目覚ましい活躍ぶり。「長い距離、長い時間をいかに楽しめるランナーであるか」。それが、いまの上田さんにとっての勝者の基準です。
アメリカの100kレース”Sean O’Brien” に参戦
今年の2月には、語学留学先のアメリカにて『モントレイル・ウルトラカップ2015』のひとつである100kmのトレイルレース『Sean O’Brien』にチェレンジしました。
結果は見事、5位。
フライトが遅れて睡眠が2時間しかとれず、さらにレース前半で脱水状態になっての記録。ラストの6マイルで、一気に順位を上げたそう。
大学に入ってから、レース前日か前々日に食べる “勝負メシ” はカツ丼。サンフランシスコでも、日本食レストランに行ってしっかりと食しました。アメリカの選手の印象については「体格は大きいけれど、スピードは決して負けていない。戦えるという手応えを感じた」といいます。
怪我を乗り越えて、次のステージへ
このアメリカのレースで足首を捻挫し、3月の伊豆トレイルジャーニーでも再び同じ箇所を捻ってしまったことから、いまはじっくり回復に努めているところ。
今後は、6月にスリーピークス八ヶ岳トレイルと菅平スカイライントレイル、7月に志賀高原マウンテントレイル、8月にCCC(UTMBのカテゴリーのひとつで100k)、そして10月にはハセツネ参戦を予定しています。
「強い選手と認めてもらうためにも、やはりハセツネで連覇したい」と意気込みを語る上田さん。2連覇のみならず、3連覇にもチャレンジしていくつもりです。
これまで上田さんは折に触れ、「自分が頑張ることで、下の世代がトレイルランニングに挑戦してくれれば」と語ってきました。
それについて桑原さんが「20代でそこまで役割意識があるのは珍しいのでは?」と質問すると、上田さんは「小学校から高校まで、学校やサッカーチーム、陸上部で生徒会長やキャプテンなどを務めてきました。キャプテンシーを抱く立場にいることが多かったので、自分の世代の責任について考えるのかもしれません」と分析。
「鏑木毅さんや石川弘樹さん、いま30代〜40代の先輩方が切り開いてくださった道に続くのは自分たちだという自覚がある」と強く述べます。
いつかキリアンに勝ちたい
上田さんが選手として思い描く5年後、そして10年後のイメージとは…。
来年、大学卒業を迎えますが、プロトレイルランナーを目指すのではなく、働きながら競技生活を続けていきたいのだとか。「3年〜5年後までは、若さとスピードを武器にできると思っています。30km〜80kmくらいのレンジをメインに、スカイレースでキリアンに勝ちたい」ときっぱり。「100kmまでなら、世界で戦えると思うんです」。
「キリアンに勝ちたい。そうはっきり言い切ってくれる人は、なかなかいません。みんながものすごく楽しみにしていると思いますよ」と桑原さんも力を込めます。
トレイルランニング界で不動の地位を誇る選手、キリアン・ジョルネを超えること。
多くの日本のトレイルランナーたちが、上田さんの夢をともに見たいと願っています。