アスリートが地元のためにつくった『たかやしろトレイルランニングレース』

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未来へ橋を架けるローカルレース

毎年5月、長野県の木島平村で開催されている『たかやしろトレイルランニングレース』。トレイルランナーの山田琢也さんや元マウンテンバイク選手の斉藤亮さんらが運営するNPO法人インサイドアウトスキークラブが主催する地域密着型の大会だ。

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今年は、10周年となる記念大会。トレイルランナーの望月将悟さんや小川壮太さん、上田瑠偉さん、ノルディック複合・ソチ五輪銀メダリストの渡部暁斗さん、同じくノルディック複合選手の渡部善斗さんなどトップアスリートも応援に駆けつけた。

大会のシンボルである高社山は、標高1351.5mの独立峰。どこからでも眺めることができ、小さな頃からトレッキングを楽しんだり、スキーのトレーニングを行ったりするなど、地元では親しみある山だという。

この大会の最大の魅力は、子どもたちが主役というところ。参加する子どものほとんどが、地元や近県でクロスカントリースキー競技に取り組む選手たちのため、上位を狙って本気で参戦してくる。

小学生の部(1,5km、3km)と一般の部(12km)の2つのカテゴリーからなり、今年は小学生の部に107名、一般の部に330名が出走した。

一般の部のコースは、木島平スキー場のゲレンデを駆け上がり、その先にある高社山(こうしゃさん/標高1341,5m)を登り下りして、再びゲレンデに戻ってくるというバーティカル系だ。

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ゲレンデ部分の最速記録者には『スプリント賞』が、山頂までの最速記録者には『山岳賞』が贈られるのも、この大会ならではの趣向。

「スプリント賞を狙うと、その後がもたないんです。でも、そこが面白いところなんですよね」と実行委員長の山田琢也さんは笑う。

「この辺りはスキー競技が盛んで、世界を目指す選手もたくさんいます。そんな子どもたちが、今日一日はトレイルランで全力を出し切る。僕自身、クロスカントリースキーの競技からトレイルランに移行しましたし、斉藤亮もクロスカントリースキーからマウンテンバイクの世界に飛び込みました。そんなふうに、競技生活にはさまざまな選択肢があって、アウトドアスポーツは生涯に渡って楽しめるものだということを伝えたい。子どもたちの夢がもっともっと広がればいいなと思っているんです」。

次世代のスターが潜む表彰台

一般の部で優勝したのは、クロスカントリースキー・ジュニア日本代表の馬場直人さん(専修大学)。今回で三連覇を果たした。

2位には小川壮太さん、3位に上田瑠偉さんが続いた。

こうしたトップアスリートとともに走ることで、子どもたちは憧れを抱き、未来への夢を膨らませるだろう。

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左から小川壮太選手、馬場直人選手、上田瑠偉選手。

会場は終始、お祭りのような雰囲気。アスリートたちも、とにかく楽しそうにゴールしてくる。

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一般の部の女子1位は、スカイランニングの大会で数々の輝かしい成績を残している中学生、渡部春雅さん。続く2位から6位までの入賞者すべてを中学生と高校生が占めた。

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小学生の部のゴールでは、多くの子どもたちが倒れ込んでしまう。スタートからゴールまで、トップスピードで走ろうとするからだ。親御さんたちが慌てて駆け寄り、団扇で扇いだり、ドリンクを手渡したり。

大人は無意識のうちにどこかでセーブしてしまうが、子どもたちはそんなことはおかまいなし。「翌日のことなど考えずに全力で走る」「とにかくめいっぱい走る」というまっさらな気持ちでレースに臨む。その姿は、なんとも清々しい。

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『2016年スカイランニングジュニアシリーズ』の開幕戦でもあることから、スカイランナーの松本大さんや長谷川香奈子さん、星野和昭さんも運営を手伝い、大会を盛り上げた。

松本さんは選手と一緒に走りながら動画を撮影し、スピード感溢れる映像を日本スカイランニング協会のFacebookページにアップしている。

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MCを務めたインサイドアウトスキークラブ代表の斉藤亮さんは、「ようやく10周年を迎えることが出来ました。僕らもそれなりに年をとりましたが、まだまだ行きます(笑)。11回、12回と、これからも皆で力を合わせてコツコツ続けていきたいと思っています」と締めくくった。

大会終了後は、応援に駆けつけたアスリートたちも片付けを手伝う。

ここでは、選手も裏方も関係ない。誰もが仲間や家族、誰かのことを思いやりながら、一日を過ごしている。

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自分たちを育ててくれた故郷と、そこで育っていく子どもたちのために。

そして、活動に賛同してくれるすべての人たちのために。

これからも愛に溢れる大人たちが集い、この偉大なるローカルレースを大切に育てていくのだろう。

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・たかやしろトレイルランニングレース
https://kosha.jp